ニコ生の市長vs町長中将棋対決が凄すぎて感動したのでメモ(完結)

中将棋対決の浦野八段と福崎九段の実況ですが・・・
めちゃめちゃよかったです!
中将棋を練習してきた!という感じの浦野八段と、中将棋よくわかんね、と言う感じの福崎九段。
別々のスタンスからの実況はメリハリが効いてて面白かったです。

このコンビでまた中将棋の解説やってくれないかなあ・・・
 

[中盤その2の2 龍王横転回のもう一つの狙い]

本放送時にはぜんぜん気づかなかったのですが、前回のブログで書いた先手の9七龍王にはもう一つ大きな狙いがありました。

前回のブログで紹介した局面の最後から、仮に後手が緩い手を指してきた場合の盤面を載せてみます。


ここで先手にいい手があります。
おわかりでしょうか。

正解はこちらです。

角行で斜めに並んでいる獅子と龍王に串刺しをかけます。
中将棋の必殺技「斜め田楽」。チェスで言うところのスキュアです。

駒の価値は 獅子>龍王>>>>角行なので、獅子を取っても龍王を取っても先手が大きく駒得をします。

実際の対局では、後手山田町長は9四の歩を9五に突き、事前にこの斜め田楽を防ぎました。
中将棋の特に中盤ではこのような手を見逃しやすいのですが、さすがは島本町長。
 

[終盤その1 ディスカバードアタック]

局面は中盤ですが放送時間的には終盤にさしかかった展開。
対局者双方に対して秒読みの声が聞こえ始める頃。

中将棋連盟武田会長が紹介した一つの手順は、中将棋の面白さが詰まっていると言ってもいい展開でした。
ちょっと触れておきます。

開始局面では後手の手番。
ここで3八龍馬と特攻します。

特攻ではあるのですが、龍馬を動かしたことで6二の龍王が6七の獅子に当たるという、空き王手ならぬ空き獅子取り。
またまたチェスで言うところのディスカバードアタックです。
しかもただのディスカバードアタックではなく、龍王を遮っていた龍馬で別の駒をもぎ取りつつ、さらに龍王竪行取りにまでなっているというとんでもない手です。。

この局面を進めていくと先手の歩兵と獅子、後手の龍馬と龍王の2枚-2枚交換になり、先手が得になってしまうのですが、発想としては非常に大事です。

常にこのようなディスカバードアタックを意識しながら中将棋を指せるようになったら、中将棋の達人の座はもう目の前と言ってもいいかもしれません。
 

[終盤その2 獅子無双、そして決着]

実際は5五龍馬と、龍馬をそっと短く寄って獅子取りをかけました。

ここからの手順はノンストップで。
先手濱田市長の素晴らしい獅子捌きが炸裂します。

左側の仲人を交換してた手がここで大きく効いてきました。
手薄になった8~10筋の「食い逃げ」ラッシュ。

そしてその後は秒読みにも関わらず、獅子を前面に出してなお相手の駒の効きをことごとく躱し続けるという。
濱田市長の集中力の強靭さが見られました。
いやこれはもの凄い。

最後のまたまた強烈な銅将猛豹取りが決まったところでタイムアップ。

駒の残っている枚数で決着をつけるルールだったので、一連の獅子暴れがクリティカルヒットとなり、先手濱田市長に軍配が上がりました。
 
 

いや~…凄い対局でした。

武田会長が「我々の対局会に出てきても不思議じゃない棋力だった」と言っていたのはそんなにリップサービスじゃないんじゃないかという気がします。

先手濱田市長、後手山田町長ともに、素晴らしい、そして初心者とは到底思えない強さを見せてくれました。
 

最近になって
「中将棋はミスをするのが当たり前で、むしろミスを管理するゲームだ」
というようなことを考えるようになったのですが、お二方の差し回しにあまりミスらしいミスが見られなかったのを見て、早々に認識を改めるかどうかを考えちゃいましたね・・・

ホントに凄かった。
 

またこのような中将棋対局のイベントが行われるのを楽しみにしてます。

そして、札幌中将棋の会でもこれくらい熱い対局をしたい!
と改めて思いました。

今回は本当にありがとうございました。

(おわり)

ニコ生の市長vs町長中将棋対決が凄すぎて感動したのでメモ(3/3のつもりがやっぱり完結せず)

ニコ生中将棋対決が行われた高槻市と島本町は、どちらも大阪駅と京都駅の中間近くにあります。

島本町には数年前に中将棋の全国大会「名人戦」で行ったことがあります。
静かで穏やかな街並みが印象に残っています。
近くには山崎のウイスキー工場があり、昼食休憩のときに半分くらいの参加者がお土産を買いに行ってました。

また何かの折に行ってみたいですね。
 

高槻市のうどんギョーザもめちゃめちゃ気になってたのでちょっと調べたら、高槻うどんギョーザの会という団体があり、作り方動画を公開してました。
軽く飯テロなので、深夜帯を避けての視聴をおススメします。


 

[中盤その2 龍王の復活]

対局も動画も中盤、将棋の桐山清澄九段による高槻市の紹介が終わった後の局面からです。
この時点で先手濱田市長は秒読みになっているようです。

まずはこちらの1手目。後手の龍馬と先手の龍王との交換が入ります。

大差ではないですが、駒の価値は龍馬<龍王です。
駒の価値については意見の分かれるところですが、中将棋連盟が定めている全国大会要綱に記載されている駒の点数が、割とリアルな形勢判断に使える点数ですので、ぜひ見てみてください。
第6期中将棋全国大会要綱(中将棋連盟)
 

6手目。先手の獅子追いが入ります。

中将棋では獅子を追う手は好手になることが多いです。
獅子はどの駒と交換になっても駒損となってしまうので、ほとんどの場合獅子追いに対しては逃げる手を選択せざるを得ません。
ですので、獅子を追っている間はこちら側がやりたい手の選択権を持っている、いわゆる「攻めが続いている」状態になります。
 

後手も猛豹を繰り出しますが、そこでまたこれぞ中将棋という1手が登場。

上の盤の14手目、馬による歩のタダ取りが入りました。
中将棋は駒の効きが見えづらく、また駒の効きが見えづらいこと自体がゲーム性に直結している部分があります。

こういう手を見つけた瞬間は、中将棋の一番楽しい瞬間です。脳内麻薬がドボドボ出ます。
 

そして22手目、おそらくこれで後手有利だった形勢が五分、もしかしたら先手やや良しに変わったかもしれない、そんな手が出ました。

9七仲人。

見た目地味な仲人突きですが、その意味は2手後に判明します。

前回の記事で争点になると書いていた、2七の龍王が9七の仲人交換を経て大きく転回してきました。
2七の場所では働きがいまいちで逆に狙われる一方だった龍王が、水を得た魚のように復活しました。

龍王も獅子ほどではないですが高い駒なので9七の位置でも追われそうですが、下の画像のように、自陣への逃走経路が確保されています。

また5筋に再転回して5筋の攻撃力を高めるのもありでしょう。

さらにこの9七での仲人交換で、後手の8六~11六(B六)の歩と仲人を並べたバリケードが崩れます。
このバリケードが崩れたことが、最終的に勝敗を決定づけることになったのでした。
 

3回で終わるつもりでしたが、やっぱり終わりませんでした。
もうちょっとだけ続くんじゃ

(つづく)

ニコ生の市長vs町長中将棋対決が凄すぎて感動したのでメモ(2/3くらい)

対局が行われる前日の10月2日の金曜日にYoutubeライブをひとつやりました。

そのライブの中で、対局される市長と町長をこのような感じで(めちゃめちゃ失礼ながら)寸評させていただきました。


[濱田高槻市長]

元検事にして弁護士の二刀流
攻めて一流守って一流
そのオールラウンダーぶりが法廷から中将棋盤上で発揮されると考えると恐ろしい
切れ味とバランスを兼ね備えた差し回しが期待できそうです


[山田島本町長]

非常にお若い方です
趣味にボードゲームと書く方の中将棋の強さは異常で、
中将棋は盤が大きいので、状況をある程度アバウトに判断してベターな選択を取れるボドゲ勢に向いてる部分が大きい
豊富なボドゲ経験からの柔軟な駒捌きに期待しましょう


いや、すいません。

これ喋ってるとき、期待しましょう~なんて言ってる通りにホントになっちゃうとは
正直思ってませんでした・・・
ホントすいません!
 
 

さて、序盤5手以降も熟練の中将棋プレイヤーのような差し回しが続きますが、
まず最初に主導権を握ったのは後手の山田島本町長の方でした。
 
 

[中盤その1 この対局最大の争点が生まれたかも]

高槻市の名物や高槻市が取り組んでいるプロジェクト「BOTTOたかつき」の紹介の後の局面です。
ぱっと見私もわからなかったんですが、5筋で歩と飛車の取り合いが行われたところと思われます。

もしかするとこの局面になる直前の数手が、この対局の一つの見所だったかもしれませんw

後手の手番です。

先手濱田市長の右の龍王が、2七のマスまで進んでいます。
本将棋にも石田流やひねり飛車など飛車を前面に出して戦う戦法がありますが、おそらくそれに近いイメージで龍王を展開されたのかと思います。

考え方としては非常に素晴らしいです。
が、同時に龍王が狙われやすい形にもなってしまいました。
5七に銅将を配置したことで、逃げ場がなくなっているのも辛いところです。
 

逆に後手の山田町長の方は、3~4筋方面に戦力を集めていますが、この戦力の並びが非常に素晴らしいです。
前面には歩兵,仲人
中段には銅将があり、銀将も控えてます
後ろには鳳凰,龍馬,奔王

中将棋は「自分の弱い駒と相手の強い駒を交換すれば有利」なゲームですので、
このように弱い駒を前に出して、後ろの強い駒で守る形は理想的と言えます。

ボードゲームプレイヤーらしい勘所をつかんだ作戦・・・だとしたら凄すぎです。
 

この先手濱田市長の龍王が生き残るか、あるいは取られるか。
そこがこの対局のかなり大きな、もしかしたら最大の争点になるんじゃないかな~と思いました。

この盤面で、後手が先手の獅子を攻めるやり方として、以下の一例をあげてみます。
(2手目の先手の手は適当です。右側の争点に関係ない手を指したものと思ってください)

このように、2三に竪行がいるのを生かして、銀と銅の2枚で龍を攻め立てていく作戦が成り立ちそうです。
 

ここで山田町長は4四銀と、じっくり中央の厚みを強化する手を選択しました。
すぐには攻めず力を溜める、というのもまた中将棋ではとても重要な考え方です。

実際に指されたそこから数手分の手順を紹介します。

穏やかな展開ではあるんですが、先手濱田市長の玉頭のコビンを埋める金上がり、後手山田町長の獅子狙いを見据えた馬上がりとそれに対する先手濱田市長の先受け、1手1手に狙いや意図が現れたとても良い応酬です。

中将棋は対局が長いので対局中ボーッとしてくることも割とあるんですが、このように集中して指すのが大事なんだなあと思いながら、ボーッと眺めておりました。
いやいや、見習わないとね!

(つづく)

ニコ生の市長vs町長中将棋対決が凄すぎて感動したのでメモ(1/3くらい)

2020年10月3日に、大阪府の高槻市の市長と同じく大阪府の島本町の町長が、なんと中将棋で対局するというイベントがニコニコ生放送で行われました。

まずは何より、対局された濱田高槻市長と山田島本町長、
このイベントを企画運営されたニコニコ動画にゲスト出演のプロ棋士のみなさま、
そして解説に採譜にと活躍された中将棋連盟の理事のみなさまに
大きな感謝を申し上げます。

 
さて、この対局イベントなのですが・・・
 
私の予想をはるかに超える神イベントでした!
 
いち中将棋ファンとして、感想を数回に分けて書き留めておきたいと思います。
 
 

[対局開始直後の攻防]

「中将棋は初めてなので…」
「美濃囲いを作りたい」

両対局者のそのようなコメントから、駒の動かし方の紙を見ながら
和気あいあいとのんびり対局するような流れを予想しました。

が、対局開始数分で、その予想は完全に裏切られました。

最初の5手の展開です。

初手の歩の先に獅子を上がる手。これは初見じゃ指せない手筋です。
中将棋の初期配置は見ての通りごちゃごちゃしているので、
1手で玉の動きを2回できる獅子を前に出して、獅子の圧力で中央を制圧していくのが非常に有力です。
…と言われればわかるかもしませんが、言われなければ思いつかない一手です。
後手も同じく獅子を上がります。同様の手筋です。

3~4手目での馬先を通す手からの5手目の獅子上がり「高獅子」も
中将棋プレイヤー的にはよく見る手筋です。
獅子の特殊ルール(紐のついてる獅子は2マス離れた獅子で取れない)を利用して、
自分だけ制空権をより大きく確保するという先手の特権です。

 
「この市長と町長、できる・・・ッ!」
 
この対局、間違いなく名勝負になるであろうと予感しました。
 

(つづく)