獅子王戦2021 2回戦第4局 松村大地さんvs長谷川さん

獅子王戦2021の2回戦4局目。

先手松村大地さん、後手長谷川さんで対局開始となりました。

[先手(手前側):松村大地さん 後手(奥側):長谷川さん]

 
 

さて、中将棋で一番弱い駒は何か。
盤上にこれでもか〜これでもかとばかりにたくさんある歩です。

弱い駒なのですが重要な駒でもあり、有効な使いみちがいくつかあります。
この対局では、序盤で歩の使いみちがとても分かりやすい形で出ていたので、紹介したいと思います。
 
 

48手目の曲面。

後手陣に注目してください。
4筋を除くと、歩が5段目に横一列に並んでいます。

古代ギリシャの戦争では「ファランクス」という、槍と大盾を持った歩兵を横に広く並べて人の壁を作る陣形がよく使われていましたが、まさにそれと同じ意味合いがあります。
歩を横に並べておくことで、獅子が6段目に侵入することを防ぐ意味があり、中将棋の序盤戦ではとても有力な駒組みとなっています。

一段上がった効果で他のほかの駒を動かしやすくなっているので、銅,銀,猛豹を進めたり、飛車角などの位置を調整したりして、じっくり駒組みを進めていくこともできます。
 
 

63手目。
今度は先手の番です。

▲8七歩が上手い歩の突き。

獅子には居食いがあるので、基本的に歩や銀のような一手で1マスしか進めない駒をぶつけてもいいことはないのですが、この場合は獅子で歩を取った後に獅子を逃す場所がありません。
7六に引いたら獅子、8六だと龍に取られてしまいます。

後手側は獅子を逃すしかなく、先手は位取りに成功した形になります。
あとは銅や銀などで歩で作った位を確保する、隣の歩も並べて歩が並ぶ形を作るなどすれば、盤上の制空権を拡大していくことができるでしょう。
 

直後に先手の獅子が取られる事件が発生してしまうのですが、その後はお互いに小駒を前に出して戦い合う重厚な展開に。
ポイントで解説するよりは流れで見ていただく方が絶対に面白いので、ぜひ棋譜を再生してみてください。
 
 

一気に進んで319手目。

ここで先手に技が決まります。
 
 
 
 

▲10五奔王。
王手獅子取りです。

中終盤は盤に空きが増えてくる分奔王の価値が高くなるので、獅子との交換は五分に近くなることもあるのですが、飛車角馬といった走り駒が減ってくると、再び獅子の価値が大きくなります。
機敏な一手と言えるでしょう。
 
 

すぐ後の327手目。

先手は馬を成って角鷹を作りましたが、この角鷹を攻める後手の3手一組の手順は素晴らしいです。
 
 
 

▽3五竪行 ▲4十一 ▽5四横行

竪行を寄る手は一見龍を攻めた手に見えますがこれが角鷹攻めの布石。
龍を逃しますが続けての▽5四横行で、竪行を当てつつ逃げ道も塞ぎました。
この形となり見事に角鷹を御用に。

 
 

さらに手は進み・・・

最終曲面。

後手は8四の飛鷲を7五に一歩上がりますが、ここで後手がタイムアップ。

飛鷲を一歩上がったのですが、この時点で後手にはまだそこに止まるか元のマスに戻るかの選択が残っていたのですが、後手は先手に手番が移っていたと思った模様。

いや〜、これは初見じゃわかんないッス。
比較的レアなケースではありますが、同じ状況になったら気をつけたいところですね。

ただ盤面を見ると、先手は龍がいつでも成れそうで、かつ鳳凰と横行を残しているのが大きく、先手が優勢ではあったようです。
 
 

ということで、368手にも及ぶ大熱戦を制したのは先手の松村大地さんとなりました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です