獅子王戦2021、今回からは3回戦についてお送りしたいと思います。
まずは3回戦第1局、長谷川さんvs鈴木浩二さん。
先手は鈴木浩二さん、後手は長谷川さんで対局が始まりました。
[先手(手前側):鈴木浩二さん 後手(奥側):長谷川さん]
獅子を6段目に上がる「高獅子」。
先手は高獅子を選択せず、後手が高獅子の構えを取る進行。
33手目の曲面。
先手陣は一見あまり動きがないようですが、左下にご注目。
角と馬の位置が入れ替わっています。
弱い駒は前へ、強い駒は後ろへ、の原則に従った組み替えです。
馬と角の並びを入れ替える方法は色々あるので、中将棋の対局や棋譜を見るときには、それについても注目してみてください。
52手目。
後手側は左右の仲人を突いて、自陣4段目の懐を大きく広げることに成功しました。
終盤に差し掛かってくると、4段目に上がった横行2枚がお互いを守りつつ相手の成りを封じる、という守備隊形が有効になりますが、その形が概ね出来つつあります。
ただし、後手が6五に歩を上げたことで角道が塞がったため、先手はいつでも▲8七獅子から仲人を取ることができます。
後手が押さえ込んでいる状況ですが、優劣がつくにはまだまだ至っていません。
中盤になり149手目。
5筋に猛豹&銀で拠点を築いた後手は、ここから大きく獅子を左側に転回させ、有利の拡大を狙います。
8手後には、10筋の歩の取り込みと12筋の銅の捕獲に成功しました。
11筋には竪行,飛車,奔王と前に走れる駒が3枚並び、後ろに猛豹や銀も控えているので、左側で戦いを起こしやすくなりました。
しかしここで先手も鋭い反撃。
何気なく5八の銀を5七に上がった手が強力。
後手は構わず獅子で12筋の銅を取りに行きましたが、その後▲5六銀と猛豹を取れたのが非常に大きいです。
見逃しがちですが、5六のマスには5十の飛車に加え、冒頭でも取り上げた左下の角と馬が効いています。
しかも角と馬が入れ替わり、最後に馬が残る形で。
これにより、先手は後手が5筋に築いた拠点の攻略に成功します。
5筋がバラされていくと、残ったお互いの縦に効く走り駒も、
先手は安い飛車。
後手は高い龍王。
結果、後手は5筋からの龍王の撤退を余儀なくされました。
この数手の戦いが本対局の大きな転換点となりました。
194手目。
後手は3四の盲虎を4四に寄せました。
ここで先手に決め手があります。
▲5一飛成 ▽5一同盲虎 ▲5一同龍成
後手玉が詰んでしまいました。
そして同玉同龍成となり、先手が後手玉を取って決着。
※中将棋は太子が玉の代わりになる場合があり、詰みではなく玉を取ることで決着がつきます
5筋の反発から鮮やかな詰みを見せた鈴木浩二さんが3回戦第1局をモノにしました。