獅子王戦2021 1回戦第4局 Geraltさんvs長谷川さん

獅子王戦2021の1回戦第4局。

先手は、ここ数年行われた中将棋の大会の大半で優勝しているレジェンド・Geraltさん。
実況で「ゲライト」さんと呼んでしまい申し訳ございません。

そして後手は、札幌の中将棋界の総元締めにして将棋も中将棋も強い、長谷川さん。

このお二方の対局となりました。
 
 

[先手(手前側):Geraltさん 後手(奥側):長谷川さん]

 
 

ノーマルに先手が6段目まで獅子を進める「高獅子」の構えを取り、後手はそれを受けるという序盤。
そこから43手まで進んでこの形。

実況でも触れていますが、先手が8九に進めた銅が気になります。
銅将という駒は前3方向と真後ろの4方向に進めますが、この形では行けるマスがありません。
また角と馬の道を遮ってもいます。
一見悪形に見えるところですが…

ですが、右側で戦いが起こった場合、歩や仲人や銅銀猛豹などがいなくなったときに、3二にいる角を使った逆襲を予め受けた手でもあります。

獅子の位置を考えると先手は右側、後手は左側から戦いを起こしたいところ。
右側での戦いの成功率を上げるための、地味ながらも非常にテクニカルな一手です。

事実、先手は右側、後手は左側から戦いを起こしていきます。
 
 

78手目の▽3四横行は近年レベルの上がった札幌での中将棋会でもよく見られる手筋。

3筋における縦方向の防御力アップに加え、1九にいる先手の横行にプレッシャーをかけています。
反車と横行では横行の方がかなり価値が高いので、先手としては取り合いになる展開を避けたいところ。

しかし先手は逆に、この横行をターゲットとして攻撃態勢を作っていきます。
 
 

118手目の局面。

先手の次の手▲3五歩から3筋の駒の取り合いが始まるのですが、ここから後手は苦しい展開になっていきます。
先手の竪行 – 後手の横行,銅将の2枚替え、先手の銅 -後手の猛豹、先手の飛車龍 – 後手の飛車馬龍の2/3枚替えと、先手有利の交換が立て続けに行われます。

そして150手目、先手はさらにと金まで作り、右側を制圧することに成功しました。

 
 

ここから後手も待望の右側からの攻めを開始し、強い粘りを見せていくのですが227手目、ここで無念の時間切れ負け。
終局図は以下の通りとなりました。

横行2枚と獅子が温存されているのが大きく、先手優勢です。
 
 

ということで獅子王戦2021、1回戦の対局の紹介はここまでとなります。
次回からは引き続き2回戦の紹介をしたいと思います。
どーぞよろしく~

獅子王戦2021 1回戦第3局 フォクソンさんvs松村大地さん

獅子王戦1回戦第3局。
今大会(おそらく)最年少ながら切り絵作家の道を歩む将棋の強豪、松村大地さん。
「獅子将棋」開発者にして、中将棋もアブストラクトゲーム全般にも強いフォクソンさん。
このお二方の対局をお送りします。
 
 

[先手(手前側):フォクソンさん 後手(奥側):松村大地さん]

 
 

この対局も高獅子は後手。
先手の陣形は鳳凰がよく利いていて、一見弱点に見える6七のマス目を上手く守っています。

 
 

105手目の局面。
両対局者の棋風が特徴的です。

先手側で目を引くのは右側の1筋。
横行を3筋にずらして、猛豹を盾に反車,香車,竪行,飛車,飛車と縦に効く走り駒を集中させて端を破りに行きます。
さらに獅子も参戦させることで、相手の受けも制限させていこうという方針でしょう。

一方、後手側は中央が厚いです。
銀金銀のスクラムは非常に硬く、また各駒がそれほど高い価値を持たないため、相手側としては駒をぶつけづらい形になっています。
 
 

本対局で個人的に一番目を引いたのは149手目。

▲3五角と切りました。
2枚替えとは言え角と銅歩では角の方が価値が高いのですが、その後の獅子のポジションがかなり良いです。
先手は周囲の歩や仲人を取り放題で、破った1筋と合わせて後手の右側をかなり手薄にすることできました。

中将棋は駒の損得を重視するプレイヤーが多いためあまり見られることのない手筋ですが、このような手に新たな鉱脈が眠っている可能性はとても高いです。
妙手の予感がします。
 
 

しかしその後、松村大地さん側でアンラッキーな接続切れが発生。
幕切れとなってしまいました。
オンライン対局の辛いところですね…

最終局面もまだ状況はほぼ五分。

先手は後手の右側を大きく崩すことができ、角鷹を作ることにも成功。
後手は崩れた右側を逆に利用し、龍を成りやすい形を整えています。
お互いに強い駒も温存されていて、駒の損得もほとんどありません。(せいぜい歩1枚程度の差)
 
 

この先を見てみたいな~…とは思いますが、このお二方の対局を見ることができる日はまたきっと来るでしょう。
その時を楽しみにしたいと思います。

獅子王戦2021 1回戦第2局 三島のトドさんvsハリュマルさん

昨年のニコ生での素晴らしい解説が印象深い中将棋連盟会長、三島のトドさん。
対する後手は中将棋のために私に遠方から会いに来てくれたこともあるナイスガイ・ハリュマルさん。

このお二方の対局をお送りします。
先手は三島のトドさん、後手はハリュマルさんで対局が始まりました。
 
 

[先手(手前側):三島のトドさん 後手(奥側):ハリュマルさん]

 
 

8手目までの進行は少し珍しい形。

先手側はあえて獅子を6段目まで上げる「高獅子」の形を取らず、右の仲人と歩を上げ、右の馬で後手の獅子を押さえつける形を選択しました。
後手は高獅子でそれを迎え撃ちます。

右側の仲人と歩を上がることには大きな意味があります。
一つには攻めのラインを上げて盤面を制圧するという意味。
そしてもう一つには、角による獅子と馬との串刺し(チェスで言うところのスキュア)を防ぐ形を作るという意味です。

一例ですが…

上記の進行になった場合、1手目の▽11三角が、次の▽9六角の串刺しを狙った手になります。
先手側は4筋の仲人と歩を上がった効果で、▲4九馬と角筋から逃げる手を指すことができます。
 
 

対局大きくが動いたのは94手目。
▽3六鳳凰が獅子取りになっています。
鳳凰は斜め方向には2マス先にジャンプできる駒ですが、ほかの将棋類にはなかなかないユニークな性能のため、見落としになりやすい駒です。
本譜では獅子取りが見事に決まりました。

とは言え先手も諦めない。
その後も駒や局面の損得がほぼ変わらないまま手が進行していきます。
 
 

271手目の局面。
先手は成り馬や白駒に続き飛牛まで作りました。
後手だけに黒い馬や龍が残っている局面はまだ後手に分がありますが、先手も充分戦える形です。
そして実際に295手目で先手の飛牛による後手の飛鷲の素抜きが炸裂。

五分の形勢に戻りました。
 
 

その後は駒を取り合いつつさらに手が進行し…
というところで、412手で双方合意のもと持将棋が成立。
中将棋連盟大会要綱にのっとり駒の点数を数えたところ、
先手51.5、後手52.7
と僅か1.2点の差(歩1枚=1点です)で、後手ハリュマルさん勝利となりました。

1局目から大熱戦が発生してしまいましたが、これが中将棋の醍醐味の一つでもございます。

獅子王戦2021 1回戦第1局 鈴木浩二さんvs中村充さん

中将棋オンライン大会
「獅子王戦2021」
の、1回戦第1局 鈴木浩二さんvs中村充さんの対局の様子をお届けいたします。

鈴木浩二さんが後手、中村充さんが先手で対局が始まりました。

[先手(手前側):中村充さん 後手(奥側):鈴木浩二さん]

 
 

序盤はオーソドックスな展開。
先手が獅子を自分側から見て6段目に上げる「高獅子」の構えを取り、後手はそれを受けるという格好に。
 
 

地味な駒組みが続きますがまず動いたのは後手。
86手目くらいから、a〜cの筋あたりで歩を上がって攻め駒を集め、左側から攻め込むぞ〜という構えを見せてきました。

106手目や138手目は面白い手です。

飛車や奔王を縦に攻め込むと見せかけた獅子取りになっています。
 
 

152手目の7九馬成はかなり豪快な手です。

後手の馬と先手の銀歩の2枚替えで、損得だけで見ると後手の損ですが、
・獅子を前に出して運用できる
・後手の反車で先手の横行を取れる
というメリットもあります。
本譜ではその後、獅子の拠点を生かし龍王→飛鷲の成り込みに成功しました。
 
 

そして終局図。

駒得は先手、駒の働きは赤い馬と飛鷲を作った後手の方良い、
という状況で、さあこれから・・・というところでしたがここで無念の時間切れ。
後手中村さんの勝ちとなりました。

ネット対局は切れ負けが頻発しやすいので要注意なのでございます。

中将棋オンライン大会「獅子王戦」2021 レポまとめ

9/18(土)〜19(日)に、中将棋連盟主催のオンライン大会
「獅子王戦2021」
が行われました。

当初はオフラインで、しかも我が札幌でやろう!という方針もあったようですが、
コロナ禍だし緊急事態宣言も出そうだし、気軽に飲み食いしながら対局できるし、
何よりパン1で対局できるし!!
・・・ということでオンラインの開催となりました。

今回私horawoは司会進行役ということで参加させていただきましたが、とてもとても楽しい大会でした。

場所をお貸しいただいたSDIN中将棋さま、
企画を進められた中将棋連盟さま、
そしてご参加くださったみなさま、

素敵な時間をありがとうございました!!!
 
 
 

スイス式3回戦で行われた大会、結果は以下の通りとなりました。

1位は、さすが中将棋界のリビングレジェンドとも呼び声も高い優勝候補の筆頭、Geraltさん。
2位は、締め切り寸前の参加者足りない助けて〜とのツイートに爆速反応でレントリーしてくれたくれた、ハリュマルさん。
3位は、9×9マスの将棋盤でもできる「獅子将棋」の開発者にしてアブストラクトゲームの達人、フォクソンさん。

しかし本大会、参加者の実力がかなり拮抗していました。
同じメンツでもっかいやったら全然違う結果になるんじゃないかな〜・・・
 
 
 

ということで、以降何回か(たぶん11回くらい)
にわたって、獅子王戦各対局のふりかえり的な記事を投稿していこうかと思います。
よろしくお付き合いくださいませませ。
 
 
 

(対局記事一覧 公開した記事にリンクが付いていきます)
1回戦第1局 鈴木浩二さん vs 中村充さん UP!
1回戦第2局 ハリュマルさん vs 三島のトドさん UP!
1回戦第3局 松村大地さん vs フォクソンさん UP!
1回戦第4局 Geraltさん vs 長谷川さん UP!

2回戦第1局 中村充さん vs Geraltさん ※棋譜取り損ね・・・すみません!
2回戦第2局 フォクソンさん vs ハリュマルさん UP!
2回戦第3局 鈴木浩二さん vs 三島のトドさん UP!
3回戦第4局 松村大地さん vs 長谷川さん UP!

3回戦第1局 長谷川さん vs 鈴木浩二さん UP!
3回戦第2局 松村大地さん vs 三島のトドさん UP!
3回戦第3局 フォクソンさん vs 中村充さん UP!
決勝戦 Geraltさん vs ハリュマルさん 10/7 UP!
 
 
 

当日のYouTubeライブもアーカイブに残してます。
よかったら見てください。

(1回戦)

(2回戦)

(3回戦)

(閉会式&自由対局会)